第33回
辯德第三十三
2019.01.22更新
日本人の精神世界に多大な影響を与えた東洋哲学の古典『老子』。万物の根源「道」を知れば「幸せ」が見えてくる。現代の感覚で読める超訳と、原文・読み下し文を対照させたオールインワン。
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辯德第三十三
33 足るを知る者は富む
【現代語訳】
人のことがわかる者は智者であり、自分のことがわかる者は明智者(智者よりかなり上をいく)である。人に勝つ者は力があるからであるが、自分に勝つ者は、本当に強い人である。
足るを知る人は富む(現実を愛し、現状に幸せを見つける人こそが豊かな人である)。努力を続ける者は、すでに志を果たしていることである。自分の本来の在り方を失わない者は、長続きする。たとえ死んでも、「道」と一体の人は滅びることがない(「道」のままにあるので)。これが本当の長寿である。
【読み下し文】
人(ひと)を知(し)る者(もの)は智(ち)なり、自(みずか)らを知(し)る者(もの)は明(めい)なり。人(ひと)に勝(か)つ者(もの)は力(ちから)有(あ)り、自(みずか)らに勝(か)つ者(もの)は強(つよ)し。
足(た)るを知(し)る者(もの)は富(と)む(※)。強(つと)めて行(おこな)う者(もの)は志(こころざし)有(あ)り。其(そ)の所(ところ)を失(うしな)わざる者(もの)は久(ひさ)し。死(し)して而(しか)も亡(ほろ)びざる者(もの)は寿(いのちなが)し(※)。
- (※)足るを知る者は富む……「足るを知る」は有名な故事成語になっている。なお、立戒第四十四にも「足るを知れば辱(はずかし)められず」とある。
- (※)死して而も亡びざる者は寿し……この一文はいろいろな解釈がなされてきた。本文の訳に近い次の解説が一番ピンとくるものと考えている。「すなわち、肉体は個別的存在であるが、「道」は普遍的存在である。「道」を体得し、「道」と一体となれば、肉体は滅んでも、自己の本体は永遠の「道」とともに不滅の生命を得る、と」(『老子』講談社文庫、木村英一訳/野村茂夫補)。
【原文】
辯德第三十三
知人者智、自知者明。勝人者有力、自勝者強。
知足者富、強行者有志。不失其所者久、死而不兦者壽。
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